噛み合わせの治療(咬合治療)

・症例1

治療前

令和3年3月初診  年齢47歳  女性

 

「右上奥歯が痛くて揺れている、歯茎も腫れている」を主訴として来院。1本は親知らずで保存する必要もないが、その前の第2大臼歯も巻き添えをくっていて、問診後に2本、

保存不可能である事をお伝えし、抜歯。

全顎の歯茎の中にも黒い歯石がたまっているので、救急処置の2本抜歯のみならず、

口全体の状態を整えていく必要をまずお伝えする。

抜歯後の治癒状態確認、歯石除去、以後のブラッシング指導にご来院された時に、今回の奥歯を失った原因は歯石がたまり、歯槽膿漏となっていた奥歯だけでなく、前歯の嚙み合わせ、前歯が本来の前歯の機能をしていなかった事も

原因である事を説明する。

咬み合わせに問題がある場合にも、症状としては歯槽膿漏と同じ症状になり、患者様は、

「年だから歯槽膿漏は仕方ない」と諦めてしまわれるが、そこに咬み合わせに問題があると、その症状を進行させたり、或いは、咬み合わせが主たる原因で、歯槽膿漏と同じ症状を起こしている事がある事を説明する。

 

 

上下の前歯が以前よりより出っ歯傾向になり、

その為、左右に顎を動かそうとしても、前歯が

その機能を果たしてくれない為、ほぼ全ての

奥歯が「ズカズカ」とあたり、干渉し、その為

今回のような動く、腫れる、痛むという症状が出ていた。

治療後

お立場、ご事情が許すのであれば、本来は

矯正治療をご紹介すれば、多くの歯を削らず、

矯正治療後の咬み合わせ安定に必要な歯のみの

補綴治療(被せ物)で済むのであるが、それが

許さないとの事で、では、「矯正治療でも他の歯ですが、成人女性なのでまず4本は抜歯する治療になります。

患者様にとってゴールが見えるという意味でも安心して頂ける咬合診断をして頂く方がご理解し易く、仮歯を入れる時点で顎の運動のリハビリにもなりますが、それも省略してという治療方法を望まれるならば、矯正治療で抜歯する部位ではなく、下の前歯4本を抜歯に加えて全ての歯を補綴治療(被せ物)の対象としてよろしければ、預からせて頂きます。」とお伝えして検討して頂きました。

ご主人に「僕なら絶対この治療はやらない」と言われていたそうですが、この患者様はご英断され、まず1回目、約2時間の治療時間に8本の歯を削り、4本の抜歯、そして仮歯を入れました。

処置後、この患者様は鏡をご覧になり「先生を信じて、この治療を始めて良かったです。」という

私の30年の臨床経験の中でも、「先生とあの時出会って、この治療をしてきたから今のライフスタイルがある」というお言葉に続いて、4本の歯を抜いたその日に感謝の言葉を満面の笑みで頂いた

印象的な出来事でした。

以後、必要な治療を進め、「限度額認定証」もお取り頂き、患者様の経済的負担も最小限の保険治療として5月末に補綴完了致しました。勿論、当院ではより良い状態の維持の為に、マウスピースは

必須です。以後の検診で、より歯磨きしやすくなったお口をより長くこの状態を維持して頂く為の検診にもきちっと来院して頂いております。

この治療は、審美治療ではありません。

必要な機能を果たせなくなった前歯を含めた

全顎の咬合治療です。

機能を回復する治療をすれば、審美はおのずと

ついてきます。

審美を優先した治療は機能を損なう可能性が

ありますのでご注意ください。

 

 

補綴物作製技工所:(株)ミハラ歯研

・症例2

治療前

平成28年2月初診 年齢52歳 女性

 

顎の関節に、口を開ける時や寝起きにしばしば痛みを自覚。他院にて柔らかいマウスピースを長年作製してもらっていらしたが、当院受診前は数カ月に1回程度の頻度で穴が開き、穴が開くと連絡して、診察は無いまま受付で新しいマウスピースをもらって帰るという事を繰り返しておられた。

前歯は真中、前後、上下に隙間があり、若い頃より隙間が空いてきたような気がするとの事。

横に動かした時、糸切り歯(犬歯)が本来の働きをしていない為、奥歯が上下で噛む時も横に動いた時にもズカズカとあたる噛み合わせでした。

加えて前後的な隙間が大きく、下顎は噛み心地の良い所を探しにいつも前後に不安定な動きをして、「はい、噛んでみて」と言うと必ずといってよい程前歯の先で噛み合わせていらした。

この犬歯が犬歯としての働きができていなかった事、前後的に心地よい噛み合わせを探しに不安定な顎の動きをしていた事が、顎の関節に痛みを発症させ、頭痛、肩こりの遠因となり、柔らかいマウスピースに頻繁に穴を開けてきていた主な原因と診断しました。即ち咬合不全による顎関節症です。

治療後

平成28年5月

年齢的、立場的に、この年齢からの矯正治療は

選択肢にないという事で、全顎治療(すべての歯が治療対象となるという事)をご了解頂き、自費咬合診断の上、補綴治療を行いました。

治療期間中、1本は保存不可能と診断、抜歯、又噛み合わせ位置がスムーズに落ち着くかの

経過観察が必要な為、仮歯は自費で作製。 

この患者様の場合はお体が下顎安静位にスムーズに適応された為、最終補綴物作製に早く着手する事ができました。

咬合治療、インプラント治療後のマウスピース装着は必須事項です。

この患者様も治療後マウスピースは装着して 頂いていますが、噛み合わせが安定したので、

以後、穴が開いてくる事は一度もありません

顎関節の痛み等、不定愁訴は解消し、数カ月に

一回の定期検診にて経過観察中です。

 

 

補綴物作製技工所:(株)ミハラ歯研